三分一湧水(さんぶいちゆうすい)

下流の村で湧水を分け合う工夫

八ヶ岳の峰々に降り積もった雪・雨水は、清らかな水として南麓から湧き出しています。これらは八ヶ岳南麓高原湧水群(名水百選)と称されており、三分一湧水はその一つです。湧水は、八ヶ岳山麓の人々にとって貴重な水源です。八ヶ岳南麓は大きな河川がなく、湧水以外の水利が乏しかったため、農業用水は湧水に頼らざるを得ず、水を巡った争いが絶えませんでした。
三分一湧水には、分水池が設けられ、水を三方向に平等に分配する工夫がされています。江戸時代の「おんだし」(山津波、土石流)で湧水口が坂本家という有力者の領地内に移動して以来、江戸時代から近年に至るまで、坂本家が三分一湧水の管理を取り仕切ってきました。三方向に分けられた水は、主に灌漑用水として利用されています。
もっと知りたい
・堰(せぎ):水路のことを指します。湧水から伸びる堰は、棒道沿いでも見られます。坂東二番の石仏付近は、棒道沿いに女取湧水からの堰が流れています。三分一湧水付近から西国十九番の石仏付近の堰には、ところどころに下り口が設けられており、野菜などを洗えます。湧水が生活に密着している様子が見て取れます。
・ 長坂三ヶ区の札番・水番制度(山梨県指定無形文化財):水争いを解決するための工夫として、三分一・八右衛門出口・女取湧水の下流にある長坂上条、長坂下条、渋沢の旧長坂町の3集落(三ヶ区)では、三つの湧水と堰の点検・清掃を地域の当番制で行う仕組みが、江戸時代から現在まで続けられています。点検時に当番が札を入れかえ、点検済みであることを示す「札所」は、各湧水の近くで見ることができます。

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