富蔵山公園(とくらさんこうえん)

馬にまつわる信仰の地

牛馬の神である富蔵山(とくらさん、長野県)信仰が伝わる地で、大小様々な馬頭観音が数多く安置されています。馬を取引する馬喰、馬の医者である伯楽が多かった北杜市で、馬頭観音はよく信仰されました。武田信玄が小荒間で合戦した際に戦死した馬を祀ったという伝説もありますが、この合戦は実際にはなかったようです。
入口には怒りの表情を浮かべた馬頭観音があります。優しい顔をしている棒道の馬頭観音と対照的な、典型的な馬頭観音です。正面の蠶玉大神(こだまさん)の碑は蚕の神を祀ったものです。養蚕の始まりに馬が関係することから、馬頭観音と蠶玉大神を関係させて祀る例はありますが、北杜市は県内でも養蚕に取り掛かるのが遅れたためか、両者を結びつけて祀る例はあまり見られません。例えば横手駒ケ岳(白州町)の辺りでは、馬頭観音は養蚕を守護するものと考えられています。

入口の階段には細かい線が入っていますが、これは手彫りによるノミ切りという仕上げに特有のもので、見た目を美しく仕上げるだけでなく、滑り止め効果もあります。様々な石造物を観察できる公園です。

この付近は美しい山々を見渡すビュースポットでもあります。富蔵山公園を背に立つと、甲府盆地の向こうに富士山、右手に南アルプス。東側に向かって歩いていくと、左手に八ヶ岳を望むことができます。
もっと知りたい
・蠶玉大神(こだまさん)の伝説:養蚕の神・蠶玉大神には、不思議な伝説が残っています。昔、ある農家の娘がその家の飼い馬と恋仲になり、ついには夫婦になりましたが、娘の父親が怒って馬を殺し、木に吊り下げました。娘が馬にすがりついて泣くと、父は馬の首をはねてしまいました。娘が馬の首に飛び乗ると、そのままともに空へと昇っていき、蠶玉大神になったのだといいます。同様の伝説は「オシラサマ」の物語として、東北地方にも多く見られます。
・馬頭観音:頭上に馬面を載せて憤怒の相を浮かべ、畜生道から衆生を救う観音です。一般庶民は農耕や運搬、財産など馬からの恩恵を受けることが多いため、馬の病気や道中安全を祈願するために、馬頭観音碑を道沿いに建てる信仰が東日本で広まりました。
北杜市は馬との歴史が長く、馬は大切な働き手であると共に、家族のような存在でした。明治以降、共に一生懸命働いてくれた馬のためのお墓として、バリエーション豊かな馬頭観音がたてられるようになりました。

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