丸額縁の中の富士山

韮崎宿の中では一番南、東京寄りにある神社です。かつて富士山よりも高かった八ヶ岳が崩れてできた七里岩、その七里岩の離れ小島のような船の形をした高台「舟山」にあります。鳥居をくぐり、まず目に飛び込むのは、土俵です。現在も子供たちによる奉納相撲がお祭りでおこなわれています。楽しみながら地域の伝統が子どもたちに引き継がれている瞬間です。ちなみにお祭りは8月15日頃、暑い盛りですが、子どもたちの元気な姿を眺めるのも楽しいひと時となるのではないでしょうか。
お賽銭を投げ入れて参拝したら、右手を御覧ください。ドーナツの形をした不思議な石の存在に気が付くはずです。ぜひ、覗き込んでください。晴れていれば、富士山を望むことができます。丸い額縁の中に富士山が浮かび上がるのです。これは、鏡石と呼ばれる霊峰富士山を信仰する心を伝えてくれる石造物です。信仰心だけでなく美的センスを感じさせる装置。そんな装置を思いついた韮崎宿に住んでいた江戸時代の人たちを思いながら散策をするのも楽しいでしょう。
ところで、こんなお話があります。「韮崎」という名前の由来についてですが、「七里岩の先端と舟山の先端がにらみ合っている間にある町で、「先で睨みあっている」から「にらみさき」で「韮崎」」というのです。「ちょっと待て、そんな争いごと大好きみたいな由来じゃ困る!」ということで、「七里岩の先端がニラの葉の先に似ているから」という由来の方が、地元の人たちに好まれます。
もっと知りたい
大きな丸い石に注目:本殿の左手に、大きな丸石が鎮座しています。これは丸石神と呼ばれており、甲斐の国山梨県に特有のものといえます。山梨県人はこの丸石を見るとホッとするといいますが、もちろんそうでない人もいます。さて、この丸石の台座の石垣を眺めると、半分埋まった扇の形をした石を見つけることができます。この洒落た石垣からは、石工さんの遊び心と技を感じることができます。
厚みのある石造りの屋根に注目:石造りの厚みのある大きな屋根とそれを支える二本の石柱の祠、これは韮崎市や北杜市の神社に祭られている石祠(せきし)の特徴の一つです。どれも似ているため、どの神様が祀られているのかは容易には判断がつきません。地元の方に出会ったら、勇気をもって尋ねてみるといいかもしれません。
神社なのに「大日如来」?:大日如来と大きく彫られた石碑があります。一瞬、お寺に参拝にきたかと勘違いしてしましますが、実は、この石碑は平成時代の境内整備で地中から発見されたものです。おそらく、こんな歴史があったのでしょう。昔は神様も仏様も一緒にまつられていたが、神仏分離でどちらかを選択しなければならなくなった、姫宮さんでは神様を選んだ。それで、仏様の大仏如来さんは地中の中へ……。これからは、神様も仏様もこの場所から、私たちの町を見守っていただけるように祈るばかりです。

COURSE MAP

次のスポットへ行ってみよう!