西国十五番 十一面観音立像(じゅういちめんかんのんりゅうぞう)

棒道の石仏-地元の人々が地域や旅人の安寧を祈って建立した小さな観音霊場

江戸時代末期に、棒道を行く旅人や商人の道標として安置された石仏群の一つ。
西国三十三所・坂東三十三所になぞらえた観音像であり、現在も39体残されています。江戸時代に全国で流行した、観音霊場を模したもの(写し霊場)で、巡拝すると札所巡りと同等の功徳が積めると考えられています。
この石仏と対応する札所は新那智山観音寺(京都府)で、本尊は棒道と同様に十一面観音です。

衣を跳ね上げるような表現は棒道の石仏の特徴。

「昔より 立つともしらぬ 今熊野 仏の誓い あらたなりけり」という御詠歌(参拝時に詠うとご利益が高まる和歌)が刻まれています。

十一面観音は、11の方角に常に目を向けて衆生を救うとされます。一般に正面三面は穏やかな慈悲相・左三面は怒っているような瞋怒相・右三面は牙を出す相・後一面は大きく笑った暴悪大笑相、頂上一面は仏相(如来相)ですが、棒道の石仏は正面以外の表情の細かい差異は省略されているようです。小さな石材に彫るという難しい制約の中で、いかに十一面観音を表現しているのか、という観点から見るとより深く楽しめます。
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・棒道の石仏の見どころ:顔の表現に力を入れるためか、頭が大きめなのが棒道の石仏の特徴。また、細かい加工がしやすく黒っぽい石である安山岩や玄武岩といった、八ヶ岳の火成岩を用いて作られています。光背(仏像の後ろに付ける、仏身から放たれる光を象った装飾)の形も、自然な石の形をそのまま見立てたもの、石に彫り込んだものなど様々です。一つ一つの表情、造形、石材の様子、ノミ跡といった細部を見比べながら歩くとより楽しめます。また、花や食物が供えられているなど、地域で大切にされていることが伺えます。

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